学生の「みてください」がいつしか「みてみてっ!!」に変わる作文クラス

2021年5月25日火曜日

04中国の大学

t f B! P L

ひよこまん

 

2019年の9月から中国の大学で日本語教師をしているきいろいぴよ🐣です。


中国の大学で日本語教師をしているといいながら、日本語の授業の話は全くしていないことに気づきましたので、今回は私が過去に受け持った作文クラスでのエピソードをお話ししたいと思います。
中国の大学で作文クラスを担当することになって、どうしようかと悩んでいる日本語教師さんに読んでもらいたい記事となっております。

どうぞよろしくお願いいたします。

一般的な作文クラスの流れ

私の勝手なイメージなのかもしれませんが、作文クラスといえば
①何かのテーマについて最初クラスで話し合って理解を深める。
②400字とか800字の作文を書かせる。
③先生のチェックと共に推敲させる。
④発表
みたいな流れだと思います。


一般的な作文クラスをやってみてわかった問題点

上のような作文クラスを何回かやってみてわかったことがありました。
①テーマを決めるのが大変。
 学生が書きやすそうなテーマを探さなければなりません。


②話を膨らませるためのトークの準備が大変。

③先生がお手本を準備するのが大変。
 お手本があった方が学生が書きやすいかなと思ってお手本を準備していました。

①~③は簡単に言うと授業準備が大変ということです。
つづけます。

④学生の書く作文に個性がなくなる。
 授業準備をしっかりしないと学生は作文を書けないのだけれど、上の①~③の授業準備をしっかりすればするほど学生の書く作文に個性がなくなります。

⑤同じような内容で同じようなところをたくさん間違えている作文を30枚もチェックする作業はかなり苦痛。

⑥学生が間違えるポイントはだいたい決まっていて、数回の指導ではなおらない。

④~⑥は簡単にいうと事後処理が大変ということです。

上の①~⑥の問題点を一掃できる手段は何かないかと模索した結果、私が行きついたのが落語の「三題噺(さんだいばなし)」を活用した授業でした。

三題噺(さんだいばなし)とは

三題噺(さんだいばなし)とは、落語の形態の一つで、寄席で演じる際に観客に適当な言葉・題目を出させ、そうして出された題目3つを折り込んで即興で演じる落語である。三題話、三題咄とも呼ぶ。
~Wikipediaより~

落語の「三題噺(さんだいばなし)」を使った授業

作文クラスでは実は学生が何について書くかは正直何でもいいんです。(私にとって)
とにかく学生が何か文章を書いて、先生はその文章の間違いをなおしてあげればそれで良いはずです。
それを実践するのに三題噺(さんだいばなし)のシステムはとても都合が良いものでした。


ライトレ-三題噺-【作家のためのアイデア創造アプリ!】

三題噺(さんだいばなし)についていろいろ調べているうちに、「ライトレ-三題噺-」というアプリに出会うことができました。
このアプリでは3段階の難易度設定ができます。


Easy  ・・「車」「渋滞」「暇つぶし」の組み合わせのように、
     作文しやすいお題が提示される。
Nomal ・・場所などが指定される。
     「サラリーマン」「焼肉」「会議室」などの組み合わせ。
Hard ・・ランダムにお題が指定される。

この3段階の難易度に100字・200字・400字の3種類の量的難易度をかけ合わせれば9パターンのステップを作ることができます。
最後は授業中に学生から「お題」を集めて400字で作文してもらいます。


問題点を一掃する三題噺(さんだいばなし)の破壊力

三題噺を使った授業は上の①~⑤の問題を下記のように解決しました。

①テーマを決めるのが大変。
→アプリがお題を決めてくれます。
日本語学習者には難しい単語の組み合わせもあるので、学生にあった組み合わせが出てくるまでアプリにお題を提示させる必要はあります。


②話を膨らませるためのトークの準備が大変。
→完全に不要になりました。

③先生がお手本を準備するのが大変。
→三題噺自体の導入時には私がお手本を準備しましたが、それ以降は私はお手本を準備する必要がありませんでした。
学生が自分でオリジナルのストーリーを考えます。

④学生の書く作文に個性がなくなる。
→3つのお題を使って学生が自由に作文するので、同じ話にはなりません。

⑤同じような内容で同じようなところをたくさん間違えている作文を30枚もチェックする作業はかなり苦痛。
→学生が書くストーリーは全部違うので読んでいておもしろいです。


⑥学生が間違えるポイントはだいたい決まっていて、数回の指導ではなおらない。

最後に残った問題点⑥ですが、私は学生がよく間違える10のポイントをリスト化して学生に提示しました。
学生にリストを提示することで、学生自身が間違いをチェックできるようにしたのです。
そして、多くの授業では私がチェックするのは基本的にそのリストにのっている10のポイントだけにしました。

100字のときは間違いなく書けても、200字になると間違えます。
200字のときに間違えなくなっても、400字だと間違えます。

クラスの終盤になると間違いはかなり減りましたが、10のポイントの間違いが全く無く400字の作文を書けるのはクラスの半数くらいでした。


今回私が提示した10の間違いポイント

今回私が提示した10の間違いポイントは以下の通りです。
10のポイントは時々見直すと良いと思います。国や学習者のレベルが違えば提示する10のポイントも違ってくるはずです。

1.学年・クラス・番号・名前が無い。
2.お題が3つ使われていない。
3.文字数が指定の90%以下。
4.記号が無い。間違っている。「。」「、」など。
5.中国の漢字の使用。
6.接続詞の間違い。「しかし」「そして」など。
7.ふつう体とていねい体。
8.形容詞過去の変換間違い。
9.動詞の過去形の変換間違い。
10.過去は過去形、現在は現在形。


学生の「みてください」がいつしか「みてみてっ!!」に変わる作文クラス

初めのうちは無難に文章を書いていた学生たちでしたが、途中からおもしろい文章や個性的な文章を書くようになりました。
「夢オチ」が一番多かったんですけど、恋愛仕立てにしてみたり(なぜか最後はいつもキスをして終わる。)、好きなアニメのキャラクターを登場させたりして作文を楽しんでいました。
中には勝手に2人でペアを組んで、同じ出来事をAさん視点とBさん視点でとらえたものをそれぞれ作文してくる学生もいました。
もちろんお題の3つをちゃんと含めて作文しています。
私は作文が書けた人から順番に私のところに持ってきてもらって間違いをチェックしていました。
まぁ、実際はだいたい無言で持ってくるんですけど、学期の終わりごろになると「間違いチェックなんてどうでもいいから私が書いたおもしろい作品を早く読んで!!」という感じで持ってくる学生が現れました。
私の勝手な脳内再生かもしれませんが、学生の「みてください(間違いチェックお願いします)」がいつしか「(おもしろいお話書いたから)みてみてっ!!」変わっていたのです。


最後に

いかがでしたでしょうか。今回のクラス(一学期・全16回)ではフリーお題・400字作文までで終わりましたが、更にもう一学期受け持つことになったなら、


1.起承転結を意識した一つの作品を前半・後半でお題を2回提示して書かせる。
2.前半をAさん、後半をBさんなどのように書き手を入れ替えて1つの物語を作る。

のような活動もしてみたいです。

授業準備がほぼ不要で、学生の創作意欲を搔き立てる
落語の三題噺(さんだいばなし)を使った作文授業

お勧めです。


そんなこんなで今回の記事はこれで終わりです。
それではまたの機会に

きいろいぴよ




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はじめまして きいろいぴよです。 2019年9月より中国の常州という地方都市の大学で日本語教師をしています。 今まで働いてきた国は タイ(青年海外協力隊・日本語教育・ムクダハーン県)・マレーシア(日本語学校・クアラルンプール)・キリバス(青年海外協力隊・職業訓練校・タラワ)・フィリピン(日本企業・技能実習生への日本語教育のマネジメント・カランバ)・中国(現地採用・大学勤務・常州)です。こちらのブログでは主に 中国の地方都市での暮らしと大学での日本語教育について情報発信していこうと思っております。これから中国の地方都市で働く予定の方や今現在中国で働いている方へ有意義な情報を発信していけたらと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。 2021.6.13 きいろいぴよ

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